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posted on 2023.04.21 (Fri) 2024.03.28 (Thu)

UTC(協定世界時)の基礎知識。

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時刻を扱うときに出てくる「GMT」(グリニッジ標準時)と「UTC」(協定世界時)の違いなど、詳細がよく分からなかったので調べた基礎知識のメモ。

※ 現在は基本的に「UTC」(協定世界時)が世界の標準時刻として使用される。

※ 一般市民が使用する1秒未満の精度を必要としない常用時としては「GMT」と「UTC」は同義とされる。

※ JavaScriptの「Date」オブジェクトは、「UTC」に準拠した「UNIX時間」基準だが、時差表記に「UTC」ではなく「GMT」を使った文字列を返していて実装の詳細は不明。

 

 

GMT (グリニッジ標準時)

「GMT」(グリニッジ標準時 : Greenwich Mean Time)とは、イギリスのグリニッジ天文台での天体観測を元に定められた平均太陽時のこと。(イギリスの標準時刻。)

※ 「平均太陽時」とは、「太陽は赤道上を一定の速度で動き、1太陽年で1周すると仮定」して、南中を正午12時として調整した時刻。(恒星の日周運動の観測に基づいて算出される。)

※ 「Mean Time」は「平均時」のことなので、「グリニッジ平均時」とも訳される。

※ Google Mapsのグリニッジ天文台

 

GMTの概要

  • イギリス・ロンドンにあるグリニッジ天文台での観測から定められる平均太陽時での時刻。
  • 18世紀からイギリスの標準時刻として利用される。
  • 子午線(赤道と直角に交わるように南北に引いた線)の国際基準として、グリニッジ天文台を通る「グリニッジ子午線」を本初子午線(「経度0度0分0秒」と定義された子午線)とする協定が、1884年に「国際子午線会議」で採択される。(「本初」とは「最初」、「首位」という意味。)
  • 19世紀から1920年代までに、暦や天文学、報時、測地学などの分野で世界の基準時刻として「GMT」が採用されるようになる。
  • 各国の標準時は「GMT」から何時間進んでいるか、または遅れているかで示されるようになる。(経度0度で地球を東西半球にして、東経180度までは「+」、西経180度までは「-」で示される。)
  • 「JST」(日本標準時)は、「グリニッジ子午線」から東経135度で9時間進んでいるので「GMT+9」や「GMT+09:00」と表記される。
  • イギリスにはサマータイム(アメリカでは「DST : Daylight Saving Time」)制度があるので、夏時間のイギリスの標準時は「GMT+1」になる。(冬時間のイギリスは「GMT+0」。)
  • 現在は「GMT」を部分的に継承して定められた「UTC」が国際基準の時刻として使用されている。

 

 

UTC (協定世界時)

「UTC」(協定世界時 : Coordinated Universal Time)とは、国際単位系(SI)で定義されている「1秒」に準拠する原子時計でのカウントと、観測による地球の自転運動に基づく1日の長さの両方を調整して決定される世界の標準時に用いられる基準の時刻。

※ 原子時計の「1秒」は定義上一定だが、地球の自転運動は潮汐摩擦などの影響で一定でないので観測に基づく「1秒」とはずれが生じるため、「閏秒」(1秒を挿入または削除する)で調整される。

※ これまでに実施された「閏秒」の一覧(国立研究開発法人情報通信研究機構の公開データ)。

 

UTCの概要

  • 「UTC」とは、世界各国の原子時計によるデータを元に管理されている時刻の「TAI」(国際原子時 : International Atomic Time)と、観測データから算出された世界時である「UT1」とのずれが±0.9秒以内になるように「閏秒」で調整された世界時のこと。
  • 「UT1 – (TAI + 閏秒)」が「±0.9秒」以内となるように調整された「TAI + 閏秒」が「UTC」となる。
  • 1972年1月1日0時からの現行の方式以降、2022年までの50年で「閏秒」の挿入は27回(27秒)実施され、現在は「UTC = TAI – 37秒」となっている。(現行方式は「UTC = TAI – 10秒」で開始されている。)
  • 「GMT」とは異なり、本初子午線には「IERS」(国際地球回転・基準系事業)が維持管理する「IERS基準子午線」が使用される。(「グリニッジ子午線」から見て「IERS基準子午線」は経度5.3101秒、距離では東に102.478mなので地球規模では近似で、日本の法令での本初子午線は「グリニッジ子午線」のまま現在も変更されていない。)
  • 「GMT」と同様に各国の標準時は「UTC」から何時間進んでいるか、または遅れているかで示される。(「JST」(日本標準時)は、「UTC」から9時間進んでいるので「UTC+9」と表記される。)
  • 「UTC」は、「BIPM」(国際度量衡局 : Bureau international des poids et mesures)が「IERS」(国際地球回転・基準系事業 : International Earth Rotation and Reference Systems Service)の支援を受けて維持している。
  • 「協定世界時」の英語表記は「Coordinated Universal Time」で頭字語表記だと「CUT」だが、言語毎での表記の違いや、既存の「UT」(世界時 : Universal Time)の種類との整合性から、略記は「UTC」と定められた。

 

世界時 (UT)

  • 1948年の「IAU」(国際天文学連合)第7回総会で、国際的な基準時刻の名称を「グリニッジ平均時」から「UT」(世界時 : Universal Time)とすることが勧告される。
  • 1956年から、観測から直接得られた生の世界時を「UT0」、「UT0」に経度変化の補正を加えたものを「UT1」、「UT1」に季節的変化の補正を加えたものを「UT2」と名付け、区別するようになる。
  • 1950年代からセシウム原子時計の実用化が進み、「TAI」(国際原子時)が1958年1月1日0時0分0秒(「UT2」での時刻)を起点に始まる。
  • 1964年の「IAU」第12回総会で、現行の方式とは異なる、「UT2」を採用した旧方式の「UTC」(協定世界時)が勧告され、1971年まで使用される。
  • 1967年の第13回「CGPM」(国際度量衡総会)で、国際単位系(SI)の「1秒」の定義が「セシウム133原子の基底状態の二つの超微細構造準位の遷移に対応する放射の周期の91億9263万1770倍の継続時間」と決定される。
  • 1971年の「CCIR」(国際無線通信諮問委員会、現ITU-R)で、現行方式の「UTC」(協定世界時)が決定され、1972年1月1日0時から実施される。(「UTC」と「UT1」との差が±0.7秒以内になるように「閏秒」が導入され、「BIH」(国際報時局)で調整・管理されるようになる。)
  • 1973年の「IAU」第15回総会で、「UTC」と「UT1」との差の最大値許容値を±0.9秒に拡大する閏秒の実施が勧告され、1975年1月1日から実施される。
  • 1985年の「IAU」第19回総会で、時刻を管理する「BIH」(国際報時局)と極運動を管理する「IPMS」(国際極運動観測事業)を廃止し、組織を統合した「IERS」(国際地球回転観測事業、現「国際地球回転・基準系事業」)を1988年1月から発足させることが決まる。(その中央局が世界各地の観測値を元に「ΔUT1」(UT1-UTC)や極運動、「閏秒」を管理することが決定される。)
  • 1988年から、「BIPM」(国際度量衡局)が世界各国の関係機関が管理する原子時計のデータに基づいて、「TAI」(国際原子時)と「UTC」(協定世界時)を決定し維持管理するようになる。(現在は、世界50ヵ国以上に設置されている約300個の原子時計の統計データに基づいて「BIPM」が「TAI」を運用・管理している。)
  • 2022年の「CGPM」(国際度量衡総会)で、通信システムなどに影響があり問題の多い「閏秒」の代替案として「閏分」という案が議論される。(「閏分」にすれば許容値が±60秒になり、「UTC」の加減算は約100年に1回で済むので。)

[ UT0 ]

  • 「UT0」は、天文台での観測によって決められる世界時。
  • 「UT0」は地球の極運動(地球の地理学的極と自転軸の極とのずれ)の補正を含まない。
  • 補正が無いので、異なる天文台で同時刻に求めた「UT0」は異なる値になる。

[ UT1 ]

  • 「UT1」は、各国天文台の地球自転観測データをもとに「IERS」(国際地球回転・基準系事業)が定めている世界時。
  • 「UT1」は、「UT0」から観測地の経度に表れる極運動の効果を補正して計算される値。
  • 「UT1」は地球上のどこでも同じ時刻で、静止座標系に対する地球の真の回転角を定義する。
  • 地球の自転の角速度は一様ではないため、「UT1」は1日当たり±3ミリ秒程度の不確定性をもつ。

[ UT2 ]

  • 「UT2」は、年周期・半年周期などの成分が含まれている「UT1」を補正した世界時。
  • 1960年代は天文航法、測地天文、惑星や衛星の観測に必要とされたが、現行方式の「UTC」が始まった1972年以降はほとんど使われない。

 

 

JST (日本標準時)

「JST」(日本標準時 : Japan Standard Time)とは、日本の標準時のことで、本初子午線から見て「東経135度分の時差」として「UTC」(協定世界時)を「9時間」進めた時刻(UTC+9)。

※ 日本の法令では、現在も本初子午線は「IERS基準子午線」ではなく「グリニッジ子午線」とされている。(e-Govポータルのドキュメント。)

※ 本初子午線は「グリニッジ子午線」だが、基準の時刻には「UTC」が使用されており、日本の法令上は細かいことは規定されていないらしい。

 

JSTの概要

  • 「JST」は、総務省所管の「国立研究開発法人情報通信研究機構」(NICT)が管理する原子時計(詳細は公式サイト)によって生成・供給される「UTC」(協定世界時)を9時間(東経135度分の時差)を進めた時刻のこと。(NHKやNTTの時報にはこの「JST」が使用されている。)
  • 「国立研究開発法人情報通信研究機構」の「UTC」は「UTC(NICT)」と呼ばれ、「BIPM」(国際度量衡局)の「UTC」との差が±10ナノ秒以内となるように調整・管理されている。
  • 「JST」で正午12時00分00秒なら、「12:00:00(UTC+9)」のように表記される。(この「JST」時刻での「UTC」は午前3時で「03:00:00(UTC)」。)
  • 日本の基準が東経135度なのは、「平均太陽」は24時間で地球を一周するとして「360度 / 24 = 15度」が1時間の時差になり、東経135度(「15度 × 9」)の子午線が日本を通っているから。(東経135度子午線の上にたまたま明石市などがあるのであって、明石市が日本の時刻の基準ということではない。)

※ 「子午線」という呼称は、方位を十二支で表したときに、真北が「子」(ねずみ)、真南が「午」(うま)であることに由来する。(真北と真南を結んだ線。)

 

 

タイムゾーンとUNIX時間とISO 8601

タイムゾーン

※ タイムゾーンの一覧(Wikipedia)。

  • 「タイムゾーン」(time zone)とは、地球上で同一の標準時を採用している地域帯のこと。
  • コンピューターなどにおいては、機器内部の時刻をどの地域の標準時で運用するかを定めた設定項目。
  • 「タイムゾーン」は本初子午線(「IERS基準子午線」または「グリニッジ子午線」)を基準にして基本的には経度15度(時差1時間)単位で分かれている。
  • 本初子午線で分割される地球の東の半球は「+」、西の半球は「-」として「UTC」からの時差が表現される。
  • 必ずしも子午線通りの直線状に分割されているわけではなく、国や地方の境界に従って分かれている。
  • 「UTC」から1時間単位の時差ではなく30分単位や15分単位で細かく指定する国や地域もある。
  • サマータイム制度を導入している地域では、サマータイムの期間は時差が変わるので「UTC」表記での±の値も変わる。
  • 地球上で最も時刻が早い地域はキリバスのライン諸島の「UTC+14」で、最も遅いのはアメリカ合衆国領のベーカー島とハウランド島の「UTC-12」。

 

UNIX時間

  • 「UNIX時間」とは、コンピューターにおける日時の表現規則の一つで、主にUNIX系OSで標準的に用いられている形式。
  • 「UNIX時間」は、「UTC」での「1970年1月1日午前0時0分0秒(「UNIXエポック」と呼ばれる)からの経過秒数」で時刻を表す。(真の経過秒数ではなく、閏年は考慮されるが閏秒は差し引きしていない秒数。)
  • データ型が32ビット符号付き整数型で扱われるシステムの最大の値は「21億4748万3647」で、西暦2038年1月19日3時14分7秒に「UNIX時間」がこの値を超えるため正しく時刻を表すことができなくなるという2038年問題がある。
  • データ型を64ビット符号付き整数型にしているシステムの場合は西暦3000億年頃に上限に達する。
  • 64ビットへの改修が難しいシステムで32ビット符号なし整数型で対応している場合、西暦2106年に上限に達する。

 

ISO 8601

  • 「ISO 8601」とは、「IS」(国際規格 : International Standard)を策定している団体「ISO」(国際標準化機構 : International Organization for Standardization)によって定められた「日付と時刻の表記」に関する国際規格。
  • 国ごとに異なる年や月の記述順序、時間の単位などに依らず、日時の表記を標準化するために使用される国際規格。
  • 基準の時刻には「UTC」が使用される。
  • インターネットで利用される技術の標準化を推進する団体「IETF」(Internet Engineering Task Force)が発行している時刻に関する仕様書「RFC3339」も「ISO 8601」に準拠している。(GoogleのAPIなどでも時刻の仕様に「RFC3339」が指定されている。)

[ 基本的な記述方法 ]

※ ISO 8601の詳細(Wikipedia)。

  • 表記方法には「基本形式」と「拡張形式」の2種類があり、どちらも「日付」と「時刻」を記号「T」で区切って記述する。(視認性から、「拡張形式」が使用されることが多い。)
  • 「日付」と「時刻」の表記に「基本形式」と「拡張形式」が混在した記述は不可。(どちらかで統一する必要がある。)
  • 時刻が「UTC」の場合は最後に「Z」を記述し、ローカルタイムの場合は最後に「+09:00」のように「タイムゾーンオフセット」(「UTC」基準の時差)を「±」を付けて4桁(または時間のみの2桁も可)で記述する。
  • 「基本形式」は、「数字」と「T」と「タイムゾーンオフセット」のみで記述し、他の区切り文字を入れない。(「YYYYMMDDThhmmssZ」。)

  • 「拡張形式」は、「西暦年」、「月」、「日」の間を「-」ハイフンで区切り、「時」、「分」、「秒」の間を「:」コロンで区切って記述する。(「YYYY-MM-DDThh:mm:ssZ」。)

  • 基本的に「西暦年」は4桁、「月」、「日」、「時」、「分」、「秒」は2桁で記述するが例外的な記述方法もある。
  • 「時刻」の「分」、「秒」は省略可能。(「hh」または「hh:mm」が可能。)
  • 「秒」のあとに「,」ピリオド(または「.」コンマでも可)を記述して「秒」の小数点以下を最大6桁まで記述できる。
  • 24時制だけが規定されていて、12時制のオプションは存在しない。
  • 「時刻」の「00:00」は日の初め、「24:00」は日の終わりを表す。(「2023-03-31T24:00+09:00」と「2023-04-01T00:00+09:00」は時系列上は全く同じ時刻を意味する。)

 

 

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